プロローグ

2月8日金曜、左肩腱板断裂手術からちょうど半年。術後6ヶ月検診でMRIと主治医の診断。

残った腱と上腕骨は問題なくくっついたね、もう壊れる心配しないでリハビリ追い込んでいいよ、との見立て。

が、岩にぶら下がっていいよ、と言われたわけでもなく、可動域は60パーセント、保持力はゼロの状態に変わりはない。ハイシーズンに向けリハビリを追い込み、追い込み、追い込み。

そんなこんなで気持ち上がった状態で週末の天狗岳を迎えることとなりましたが、左肩に爆弾を抱え、かつ身の丈以上?の雪山単独行など嫁の許しを得られるわけもなく、今回もガイドツアーに参加して、ガイドさんから色々吸収することも目的のひとつ。

「受動的な団体行動」と「自立したスマートな登山者」は対極にあるように感じますが、実は本人の主体性しだい。

ツアー山行に参加しても、天気図を読んで準備して、地形図から山行計画立てて、オンサイトで実践すれば団体の中でも能動的に行動できます。

ざっくり今回のルートは夏沢鉱泉から入山して、みかぶり山から根石岳山荘で一泊。

翌朝、根石岳を経由して東天狗、西天狗。

中山峠まで稜線を歩いて黒百合ヒュッテから渋の湯に下山します。

強風域となるであろうみかぶり山から先の鞍部、天狗岳での判断基準をガイドさんから学ぶのも目的のひとつ。

ってか、ガイドさんと一緒の時こそエクストリームな体験を期待している部分もあり、、、

時間的にみかぶりを詰めるのが15時過ぎるでしょうから、みかぶりから根石岳小屋まで強風で進めなかったらどう判断する?夏沢鉱泉まで引き返す?雪山の日没行動ってどんな感じ?

など、妄想は膨らみます。

 

どう準備する?

このサイト記事では毎度おなじみですが、八ヶ岳は日本のおへそ。

四方八方を北アルプス、中央、南アルプスに加え奥秩父、丹沢、群馬の峰々に囲まれ海からの湿った空気が届きにくいエリア。

だから冬の晴天率は高い。

しかーし、太平洋近海上を低気圧が通過する「南岸低気圧」の影響は受けやすい。

 

9日の天気図を見ると朝から午後にかけて弱い低気圧が太平洋を東進。

これが3桁台に成長するとドカ雪ですが、1000hp超えているのでゆるーく降る感じでしょうか。

日本海上にも弱い低気圧が停滞。いわゆる「二つ玉低気圧」のような状態。

南岸由来の南西風と、日本海由来の北西の風に煽られそうな予感はします。

10日は一変して冬型がゆるみ、大陸から高気圧が張り出してきます。

前日、猛威を振るっていた北日本の寒気も緩みますから晴れて、気温もさほど低くない(とはいえマイナス10度以下にはなるでしょうけど)と予測。

北からの風が強うそうなので天狗から中山峠まではアゲインストの中進むのかなぁと。

この週末は「記録的大寒波襲来!」とテレビ各局は大騒ぎ。

八王子やら新宿やら、渋谷などの大型ターミナルに記者を配置していました。が、、、、、

高層天気図見ればマイナス40度以下は北海道から東北。北日本もマイナス30度くらいで、関東甲信越に関してはマイナス20度くらいで「普段と変わらんが、何か?」という感じ。

南岸の影響で都内や千葉に多少の降雪があった程度。

テレビの天気予報と山の天気予報はごっちゃにしない。

 

今回の装備写真は大物だけ並べてみた。

アウターグローブは基本5本指タイプで行動しますが、限界感じたらミトン。

インナーは化繊とウールをTPOで選択。

ザイルをつなげるもの、ビレイをとるためのもの。

ザックの中にはツェルト。

靴とアイゼンはこれしか持ってない。。。

アウターシェルは襟周り、袖周り、足首周りがそれぞれ個性的な仕様になっていて風雪時の取り回しが非常にやりやすい、自分にとっては現在のベストチョイス。

いざって時は800FPのダウン。安定してる時は山行後のお風呂上がりにはおります。w

 

順調であれば集合前にお昼分のカロリーを駅弁で摂って、夜ごはん、朝ごはんは小屋でしっかり摂取しますがら、2日目の行動食と非常食はこんな感じ。

昨シーズンの冬山は「梅干し」のお世話になることが多かったけど、今季無縁なのは体重10キロ近く落としたからかな?

根石岳山荘へ

ツアーのよきところは現地の移動が確保されていること。茅野までの移動だけ自分で手配。

えきねっとで予約すると、券売機にクレジットカード差し込むだけで発券してくれます。

3月からあずさ、変わりますよね。車内でのトラブル、圧倒的に増える気がします。

 

11:10茅野集合なので新宿08:30発のあずさ7号で。うーーーん、小屋の到着時間考えたら、自分で計画するなら7時台のあずさにするけどね。

現地で即行動できるよう、シェルパンツとか車内で着込んで茅野駅からタクシー分乗で桜平まで。

いつも思うんですが、八ヶ岳周辺のタクシードライバーって、、おっとりしてる人でも飛ばしますよね。特にジャンボタクシー。慣れないわー。

路面凍結のため三井の森まで夏沢鉱泉の送迎車がピックアップに。

 

期待していた雪上車ではなかったですが、醤油樽の滝下のゲートまで乗せていただき、そこから荷物だけ夏沢鉱泉小屋に運んでいただきます。

今晩お世話になる根石岳小屋と夏沢鉱泉は「硫黄岳山荘グループ」なので根石岳小屋の宿泊者も送迎の恩恵にあずかれる、ってことです。

12:22 行動開始がおひるを回ってますが、自分たちはアイゼンつけて夏沢鉱泉目指し沢沿いのルートを進みます。

夏道を辿っているので2回ほど川を渡ります。石積みの堰堤も所々にありますが、これ景観美化のために石積みのパネルをフェイクで貼っているらしいですね。

13:00 夏沢鉱泉。

軒先をお借りして休憩。

 

夏沢鉱泉は通年営業していて冬季の天狗岳、硫黄岳、横岳の拠点にもなっています。

水洗の綺麗なお手洗いは戸内にあるのでアイゼン外して靴も脱いで拝借します。

 

13:30 オーレン小屋目指して沢沿いの夏道をゆるるい感じで上がっていきます。

シラビソの樹林帯の中、高度を240メートルほど上げていきますが、鈍色の空からは雪が舞い落ちてきている以外、赤岩の頭や硫黄岳を望むことはできない。

実はこれだけの降雪の中、山歩きするのは初めての事と気づき、妙にテンション高めです。

雪山に来るたびに晴天ばかりでしたから。

 

14:45 オーレン小屋

八ヶ岳を南北に二分する分岐点「夏沢峠」の西側直下に位置していて、峰の松目、赤岩の頭、夏沢峠のへのアプローチ拠点。

冬用の避難小屋はあるものの、冬季は休業中。

テン場にはひとはりのテントが。テン場のお手洗いは靴のまま拝借できてありがたい。

雪は弱いながらも止む気配はなし。これも南岸の低気圧の影響でしょうか。

14:50 みかぶり山目指して夏道を上がります。

地形図上では「荒地?」と思う感じですが、植生記号は針葉樹林帯。

標高2,590mのみかぶり山まで標高を300m上げていきます。

夏道なら1時間。雪があっても75分で上がっていきたいところですね。

高度を上げるに従い、上空を強風が抜ける音、時折北西からの風が吹き込んでくるようになってきました。

 

16:07 みかぶり山

惜しい、77分かかってみかぶり山へ到着。

根石岳、夏沢峠への分岐点となるみかぶり山のピーク(2590)はご覧の通りシラビソの樹林帯。

根石岳山荘はみかぶり山と根石岳の鞍部(2,550m)に位置します。

標高が下がったにも関わらず、森林限界を超えたような荒地となっているのは地形的に強風の通り道となっているので樹木が育成しない、からではないでしょうか。

ここから先、高度にして40メートル、距離にして数百メートル強風にさらされStop & Go の繰り返しと予想できます。

ストックをピッケルに。

サングラスをゴーグルに。

グローブを3枚重ねにして、今日のMain Event !

どれくらいかなー、MAX 25m/s といったところでしょうか。

数回耐風姿勢を繰り返し、何度かよろめき、、、

 

16:15 根石岳山荘

強風の鞍部にへばりつくように、にょきっと生えている根石岳山荘。

冬季は年末年始と週末だけ営業。

きっと今日もわたしたちのために小屋番さんは上がってきて準備をしてくれているのでしょう。

ありがたい限りです。

趣のある?本館はわたしたちご一行様だけの様子。

御一行さま男女ともに仲良く相部屋。

水洗トイレ、水場のある新館へは一瞬サンダルダッシュで!

トイレはこの時期断水なのでひしゃくで流します。

意外と乾燥効果のある土間の靴置き場。

たかそうな冬靴がずらり。いったいこの棚だけで末端価格はどれくらいか。

可愛い帳場と売店。

食堂は新館の方と2回戦。

18時の夕飯までツアーメンバーと土間で団欒。

今回、いいカメラ持ってる人、、多いなー。

夕食はハンバーグとお魚。

粕汁が冷えた体を温めてくれます。

テルモスは1回百円。

夕食後、消灯の8時まで明日の山行対策などお話ししながらチビチビとお湯を飲みつつ高度順応できてるかなーと自分の体調確認。

これで明日の朝快便なら、きっといい山行になる。

消灯とともに意識を失い、目がさめるたびに小屋が吹き飛ばされるかのごとく風音が激しい。

時計の針がてっぺんを超えた頃、風音もなくなり、明日の山行に期待が膨らみつつ、すぐ闇の中に。

 

東天狗岳・西天狗岳

04:30 起床

窓の外は無音。

階下の土間から表に出てみる。風はない。満天の星。寒い。

こりゃ、晴れるな。

今日のレイヤリング、装備を考えつつ、、、

出発は7時だけど、日の出前06:30には表に出るようスタンバイ。

今日の行動を考え朝食はたっぷり目にいただく。そして快便。

6時を回ると表の様子も微妙な感じに。

日の出は拝めそうになく、進退を考えるほどに風も出てきた。

先発隊が登り始めた根石岳もピークは雲の中。すぐそこなのに。

07:00 根石岳目指し出発。

山荘前の鞍部からたかだか50m上がるだけのピークなのだが、、どこー?

朝イチの身体に喝を入れるかのごとく程よいピッチで上がっていきます。

強風によりガレ場に薄雪がついたようなコンディション。

07:14 根石岳ピーク(2,603m)

風の強さは増してきていますが、雲も薄くなってきています。

バラクラバを通して呼気があたる部分は凍結していますが、体感はさほど低音という感じではない。日が射し始めると人間の心持ちも変わってくるから不思議。

雲が晴れていく兆しと現在の風の感じから東天狗に向けて山行を続けます。

が、東天狗も雲の中ではあります。

根石岳を50mほど降り、鞍部で本沢温泉からの登山道と合流したところから100m登り返しまします。

07:55 東天狗岳ピーク(2,646m)

ピークから上がってきた登山道を振り返ると50m尾根を上がって緩やかな肩のような稜線を上がってくる道程が見て取れます。

ゴールとなる中山峠、渋の湯に向けた稜線も鮮やかに見えています。

遠く蓼科山まで北八ヶ岳がみ渡せます。

次に向かう予定の西天狗も姿を現しました。

遮るもののない鞍部からはダイナミックな景観が期待できそうです。

仲間を逆光で撮ったら予想通りのかっこいい一枚に。

いよいよ晴れてくる兆し。

なんか中途半端なポーズ。遠くに蓼科山。

晴天のピークに10分ほど長居してしまいましたが、ここまで回復すればと当然山行継続。

08:05西天狗岳を目指します。

東天狗から西天狗への鞍部まで降る尾根からの景観は圧巻の一言。

鞍部に向けておりながら南に目をやれば峰の松目、硫黄岳からの赤岳、阿弥陀岳。そして南アルプスまで一気に視界のファインダーに。中央、北アルプスまで視界に飛び込んできて、、

ヤバイ、集中できない。

赤岳のピークはかなりの強風にさらされているようです。

ファインダーを覗くのは西天狗山頂に着いてからにして、鞍部からの登り返しに集中。

08:25 西天狗岳ピーク(2,646m)

西天狗からは

赤岳、阿弥陀岳からの甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、赤岳

中央アルプス

北アルプスは乗鞍から槍穂高までくっきり見えたけど、コンデジだとさすがに厳しい。

そして登ってきた道を振り返ると、、

雲海を従えた硫黄岳。

鞍部にへばりつくような根石岳小屋と根石岳。

東天狗へのアプローチなる尾根がすっかり姿を現した太陽に照らされています。

とりあえずは今回の山行、目的の半分を達成し、いちまい。

08:35 中山峠に向け下山

ゴールの渋の湯まで、結構あります。

中山峠までは露岩帯の稜線歩きを90分ほど。

峠から黒百合ヒュッテに降りた後は谷筋の樹林帯を120分ほど。

西天狗から東天狗へ登り返し、東天狗ピーク下30メートルあたりのトラバースラインをたどり露岩の稜線を進みます。

東天狗のトラバース、踏み抜いたらどんだけ落ちんのかなーと思いながら集中して進みます。

10:00 黒百合ヒュッテ

これから出発の人、終えてきた人、到着した人で賑わう黒百合ヒュッテで大休憩。

高価な設備投資をしたバイオトイレは200円のこころざし。ありがたく使わせていただきます。

大景観も満喫し、10:30谷筋の樹林帯を渋の湯に向けて。

さすが三連休の中日だけあり、これから入山する方々とのすれ違いラッシュで多少ペースが落ちてきます。

唐沢温泉、渋の湯の分岐ではたくさんの人がひとやすみ。

渋の湯、正式には奥蓼科登山口ってゆうんだね。

12:45 山行終了

渋の湯に到着。全ての予定、目的を消化して山行終了。

計画して、準備して、、降雪も強風も大景観も経験し。

たっぷりトレーニング。

一粒で3度おいしい山行になりました。

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