クリスマスは雪山へ連れ出す
2018年雪の便りは例年に比べてちょっと遅い感じ。
嫁にとっての雪山のイメージは一緒に見にった「MERU /メルー」や自宅でよく見る平出さんのシスパーレみたいな「どえらく危険なもの」という感じのようだ。
いやいや、きちんと準備して身の丈にあったルートでPDCA回せば、「こんなに綺麗で楽しいいものはないよ」を理解していただくためにクリスマスは嫁を雪山に連れ出します。
昨年はまづは雪山の美しさを知ってもらおうと山行は無しで新穂高温泉「槍見館」でご一泊。
新穂高ロープウェイで笠ヶ岳から西穂までぐるりと晴天のパノラマを楽しんでもらって、雪の回廊でお散歩。
雪山の神々しさを感じてもらいました。
今年は、雪歩きの楽しさを知ってもらおうと上高地でのスノーシュー散歩へ、
多くの人出と喧騒の中、夏に歩いた同じルートを無音の冬に歩くと、、、
中の湯温泉で一泊して釜トンネルから河童橋までピストンします。
お散歩山行でも計画は万全に
Snowshoe Tripとはいえ準備はしっかり、がlife labo流。

上高地の位置はみなさまご存知の通り。
北アルプスの南の玄関口、南東側に位置します。
西から北にかけて焼岳、穂高連峰に囲まれ、北東部には妙高、戸隠連山。
東側には八ヶ岳が連なり、南側には南アルプス、中央アルプス。
日本の名だたる山々が湿った空気から上高地をしっかりガードしているようなロケーションです。
勝手な思い込みでしょうか。。。。
しかーし、天気図から予測すると、、、
上空500hpでもマイナス14度ほどで冷え込みはきつくない。てか、この時期にしては暖かそう。
どうやら北東側から高気圧由来の湿り気を含んだ風が戸隠連山を迂回して吹き込んできそう。
前線はかかってないけど、弱い気圧の谷が東進してきそうでないかい?
雪が少ないのはわかっちゃいるが、、これ雨降るね。多分、雨だわ。
と予測。
嫁にはたっぷり積もった荘厳な静寂を体験してもらいたい気持ちはありつつも、ある種いいチャンスと。
実は、現行の雪山装備で雨に降られたことがない。
life labo流の雪山装備は防水耐性より透湿と暴風耐性に趣を置いています。
この装備の防水耐性を知る意味でも、そんなにハードではなさそうな状況で雨に降られてみるのも経験値に繋がります。
ザックはオスプレーケストレル48
本来縦走用のザックですが、これが意外と雪山装備にマッチしていて使いやすい。
下の気室にはクランポン、ゲイター、オーバーパンツなど出し入れの多いもの。
ジップ付きのサイドポケットにはテルモス入れても落っこちない。
スノーシューはお宿でお借りするし、クランポンの出番もないので今回はチェーンスパイク持参。
トンネルから先、雪なくて凍結!とかありそうですもんね。
オーバーパンツはミレーの旧型ドライエッジ2.5層。「ティフォン」になる前の旧型を一昨年のファミリーセールで1万円で入手したもの。
ヒートアップしても抜けがいいのと、ダブルジップなのでクランポン履いてても着脱がラク。
安くて使いやすくて愛用しています。
雨に降られたことないので今回耐水性を検証します。
防寒グローブ2セットに加えて、おそらく今回出番となるであろうレイングローブも追加。
アウトドライのアウター+薄手の起毛インナーなので今回はこれ一枚でも行けそうだ。
荷物をデポしておくお宿の中の湯は日帰り入浴できるのでせっかくだから往路お着替えセットなども持ってみた。
ザック余裕あるし、肩のリハビリ、耐性を確認するためにも少し重めにしてみた。
そしてこのレイヤリング。
今回は0度からマイナス5度くらいがいいとこかな、風も緩そうだし、汗かきそうだな。
という推測から「防寒より抜け」を意識しました。
ドライメッシュは半袖。
ウールは抜いて、パワーストレッチのベースとベスト。ベストは身頃に保温効果のあるポーラテックアルファを入れてます。
体温調節、暴風対策にエバーブレスのインナーシェル。これは抜き差し調節用ですね。
アウターシェルはネオシェルニットバッカー。
2シーズン目で雪山性能は検証済みですが、雨はないので。どんな感じか。
マムート・エナジーSOパンツはとっくにカタログから消滅している3層ソフトシェルですが、ストレッチの効いた履き心地と防寒、耐風性は病みつきになります。
3シーズン目ですが手放せません。購入時にすでに型落ちでこれも1万円くらいで手に入れてます。
fine trackのトレッキンググローブはエバーブレスなので撥水、防水耐性ありますが、シーリングされてないんですよね。
コストと防水耐性のトレードオフなんでしょうか。
行動日の行動食は

・嫁のお手製 バターロールのハムチーズ 250kcal 炭水化物28g
・トレイルミックス(ミックスナッツ+グラノーラ)500kcal 炭水化物20g
今回のニューフェイス
・RAW・BITE
気になるのは糖質だけで、別にベジタリアンやヴィーガンでもないんですが。
砂糖、小麦、乳、卵不使用のデンマーク産オーガニックバー。
有機デーツ由来の甘さは体内の血糖値を安定した状態で維持できる、つまり跳ね上がりません。
という触れ込みでラインナップしてみました。
1本200-300kcal摂取できるのでエマージェンシーとしてザックにポイ!
以前はカロリー、炭水化物重視して菓子パン、おにぎりにトレイルミックスは柿ピーとかやってたんですが、結果血糖値に支障をきたしたので、手術後から行動食改革を進めています。

中の湯温泉
北アルプスに通うようになってから、アクセスは新宿から高速バスで平湯温泉や上高地へ行くことが多かった。
松本を超えて158号線梓川(犀川)流域に入るとダム(水力発電)が多いなぁ、とはずーっと思っていた。ダム萌えでもあるので奈川渡天端を渡る時はワクワクするし、その先の昔の坑道を想起させる狭小トンネルは大正、昭和にタイムスリップしてしまいそう。
そもそも北アルプスを象徴(でもないか)する黒部ダムも電力需要を満たすための計画だった訳ですよね。
山登りを通して今まで気にしていなかったような歴史にも興味は広がるから面白い。
今回のスノーシュートリップの需要なファクターとなる「釜トンネル」の由来もそもそもは水力発電のための資材運搬用軌道にそのルーツはあるらしい。
それも大正時代に焼岳噴火で堰き止められた大正池誕生をきっかけに霞沢発電所を作る計画だったそうで、彼の地を訪れるたびに目にするものがその由来になっているのも非常に心惹かれますよね。
長野県側の松本から158号を西に進むと中部縦貫道(安房峠トンネル)で岐阜県側の平湯温泉につながります。
縦貫道に入る手前で通行止めゲートがあるトンネルが「釜トンネル」
この先、158号本線は安房峠に向かって峠道を上っていきますが、冬季は通行止めになります。
その峠道の一軒宿が「中の湯温泉」。
釜トンネルゲートには「中の湯売店」と記された小屋と、秘湯ムード満載の「卜伝の湯」という昭和な光景と警備員さんのアンマッチが、上高地ツアーで来た一般観光客の方には「あれはなんぞ?」と映るはず。自分もそうでした。
売店までお宿の人に迎えに来てもらい、送迎車でお宿へ。
松本周辺からすでにぱらついていましたが、峠道を上がるにつれ晴天の穂高連山が目前に。

ジャンダルムから奥穂高、前穂高、明神。
露天風呂からもこの角度で拝むことができます。

多分、明日は見れないなーこれは。
閉鎖された国道でスノーシューの足慣らしをしようと表に出たらすでに厚い雲がせまってきました。
国道には30センチほどの積雪がありましたが、前日も雨が降ったらしくクラスト状。
サクサクといい音を聞きながら歩を進めます。
中の湯は暮れてもなかなか風情があり、良いお宿でです。まぁ、冬季以外は来ることもないかなぁ。

午前3時半に目覚め、表を見ると結構風が強い。
遠くに穂高も月明かりに照らされてはっきりとみて取れました。
これは、好転したかなとも思いましたが、朝弁食べて6時に表出た時にそれはないなと確信。
Snowshoe? Rainshoe?
6時半、釜トンネル入口で感じたのは、「暖ったケェ」という季節外れの感触。
ここから約1時間舗装された「釜トンネル」「上高地トンネル」を歩いて大正池に向かいます。

トンネル内は11パーセントほどの勾配(100m歩くと約1m上昇する)なので何気に登っています。
中の湯ゲートの標高が1,313m(あくまでGARMINでの計測値)、大正池の取り付きが1,470m移動距離2.2kmで標高を160mほど上げた感じです。
平成28年7月に開通した全長588mの「上高地トンネル」は平成26年9月に採掘が始まり当初は平成29年度開通予定だったらしい。
が、「山の日」が制定され28年8月に第1回山の日記念大会が上高地で開かれることになり突貫工事で2年ほどで開通したのだとか。
上高地トンネルを通過した地点での積雪状況はこのありさま。
大正池ホテルまで歩いてスノーシューを装着して梓川沿いの歩道を河童橋に向け進みます。
雪があろうがなかろうが、大正池の風景は心に残りますよね。
あいにく焼岳は雲と霧の中。すぐそこにあるのに全く見えません。
とろろ昆布みたいな「サルオガセ(猿尾枷)」。
コケ類なのかな?と思いますが菌類だそうです。藻を共生させて光合成して自活してるらしい。
大正池から田代池に抜ける途中で通年見ることができます。
田代池。
夏に来ても、冬に来ても透明度、、、すごい。
田代池が凍らないのは流れ込んできてる千丈沢の水が霞沢岳から湧き出す伏流水であることにその理由があるらしい。
伏流水は真冬でも5−6度あるらしいから、気温差で幻想的な霧の風景が生まれるんでしょうね。
8:45頃、田代池の水面を見ると水面を雨が叩いています。
天気図見ると10時ごろから回復に向かいそうなんだけど、、、、どうかな。

この程度の雨なら、、ね。
田代池を後に、田代橋に向かいます。
行動開始から3時間弱、田代橋のたもと、中の瀬園地の東屋でひと休み。
エネルギーを補給する前に飲み頃のテルモスでお腹をあっためて胃腸の動きを活発に。
この日はおそらく0度から2、3度といったとこだと思うんですが、この程度だとロールパンも非常にしっとりしています。
冬季の上高地は冬季専用トイレを使用します。
大正池ホテル、ここ中の瀬園地、上高地バスターミナル、小梨平にそれぞれ男女兼用で1個室用意されています。
ここまで、fine trackトレッキンググローブを使用していましたが、シームの部分から濡れが伝わってきたのと冷えもありここまで。
ってことは夏場でも森林限界から上で叩かれるような場合は他の手段を考えて方がいいってことだな。
活動の大半は低山ですからそこでは全く問題なしと判断。
10:20 河童橋
6:40に中の湯ゲートを出発し、約3時間半で河童橋に到着。
予測通り雨はほぼ上がりましたが、深い霧は穂高の山並みを隠したまま。
でもなんか楽しそうだし。
まあいいか。
河童橋付近では他のパーティもちらほらと。
ひと通り写真を撮り終えたら屋根とベンチのあるバスターミナルでお昼ご飯とします。
11:30 徐々に明るくなりつつあるバスターミナルでシャッターをお願いしたんですが。
こんなに引く?
往路はバスターミナルでスノーシュー外して車道をとっとこ。
チェーンスパイク履くほど凍結もしていないので、気持ちは中の湯温泉でひとっ風呂。
12:48 中の湯ゲートで行動終了。
中の湯で温泉に浸かって今年のクリスマストリップは終了。
次なるステップはクランポン持って北横で八ヶ岳ブルーを体感してもらおう。
小山家の雪山戦略は続きます。