2024年冬季は充分な夏山経験をお持ちの皆様に、冬山特有のリスク、地図読み、気象、雪崩、歩行技術、非常時対策などの基礎的なトレーニングを担当させていただきました。
<気象>
・冬型の気圧配置を理解する ・南岸低気圧を理解する ・冬の天気サイクルを理解する
<雪崩対策>・ビーコンを使えるようになる(基本機能、ビーコン チェック、捜索)
・雪崩地形の判別(雪崩地形、直接証拠の判別) ・グループマネジメント
<行動計画>
・ルート計画、行動時間、エスケープルートの計画
<歩行技術>
・エリアと天候に合わせた装備計画、行動計画 ・レイヤリング、防寒、アイウェアの選定
<ナビゲーション・地形図>
・雪上での現在地特定・ルートファインディング(轍を過信しない)
・積雪、トレイルに合わせた用具選定(クランポン、ワカン、スノーシュー、ストック、ピッケル) ・耐風姿勢 ・ビバーク(ツェルト設営、雪洞設営)
STEP2は西穂高丸山。樹林帯の雪上歩行、ルートファインディングと稜線での所作にフォーカスしてトレーニングを実施しました。
<気象>
当日の天気図の遷移と現場での状況を照らし合わせてみます。結構、ニンマリするくらい天気図通りの遷移でした。
6時集合時:南下していく道中晴れていた
→6時天気図:活動エリアはまだ高気圧の影響下にありました
9時平湯、新穂高到着:西穂高稜線、槍ヶ岳まで見渡せたが、笠ヶ岳は雲がかかり始めていた
→9時天気図:西から低気圧が東進。活動エリアに温暖前線が接近
12時:西穂山荘到着時:西穂稜線、乗鞍方面、笠ヶ岳方面全てに雲がかかり、弱く降雪が始まる→12時天気図:活動エリアに低気圧がかかり、温暖前線がかかりはじめる
15時:下山時、及び下山後18時ごろまで降雪が増える
→15時天気図:温暖前線の影響下に入る
18時:安房トンネル以降、降雪はなかった
→18時天気図:21時にかけて前線は南下し影響が薄れる
<雪上歩行>
⚪︎トレースの急登
・体捌き、足捌きのダイアゴナル歩行でふくらはぎのパンプを抑制する
・フォールラインに正対しストック、ブーツへの寄りかかりで前傾姿勢を取れば、足はあげるだけで下降する。足裏で着地する。
・平坦なところは蹴らずにバランス移動で進む。後ろの人に足裏を見せない。
→スピードコントロール、確実な接地が転倒を防ぎます
⚪︎トレース外の深雪
・くるぶし深さならキックステップで登高できた。降りる時はヒールキックでも滑らなかった。
・踏み抜きのなさそうなルートを選んだ。大きな木の根元(ツリーホール)、灌木の枝の下などはふみ抜きやすかった。
<ビーコン>
⚪︎グループチェク
・各人のバッテリー残量、受信、送信の状態をチェックした。毎回行う儀式です。
<スタッツ>
行動時間 5時間5分 行動距離 4.6km 累積標高 ±410m
・地形図をざっくり捉えてしまうと標高差は200m弱ですが、地形図をしっかり読み込むと最後に150mの急登があることは事前に把握できると思います。
・西穂山荘までのラストワンピッチ、標高差150mを40分で上がりましょうと課題を出しました。(夏道であれば30分で上がります)
結果は38分くらい。良いピッチでした。が、心拍数や発汗はいかがでしたか
→汗ばんだようであればレイヤリング再考、一枚抜くことも視野に入れましょう。
・谷川岳天神尾根であればこのペースが2、3時間続きます。大汗になってしまうと復路が厄介です。
<ルートファインディング>
終始最後尾から拝見していて、、、特に下りが顕著ですが、次の目標地点を意識して歩けていましたか?なんとなく漫然とトレースを辿っている気がしました。
しつこくて恐縮ですが、平日登山者の私たちは、前日の降雪、人気が無くノートレス、または濃霧となれば、ここから次はどこの鞍部まで降ると見当をつけて動かないと簡単にロストします。特にこのトレーニングでは次の目標地点を意識して歩きましょう。
<所作>
夏山ベテランのお二人でも雪山となれば勝手が違うと思います。ビーコンの着脱も練習してきていただいたと思いますが、収納するのに少し手こずってました。
大枚叩いて購入したグローブもイマイチピンとこない。
練習は本番と同じ環境(着るもの、背負うもの、寒さ)でないとなかなか身体に染み込んでいきません。今持っている装備をフル活用できるよう試行錯誤しましょう。
ポイントは「他人から見られたときにシュッとしてるなぁ」と思われる感を醸し出すことです。笑
<冬休みのホームワーク>
今回の山行の様で
・ここはうまくできた
・ここはイマイチだった
を箇条書きにしてみんなで共有しましょう。