「雲ひとつない青空」
素晴らしい山行の枕詞のような感じでよく耳にします。
ですが、世の中には天気図と睨めっこして山行時のお天気を読み解くことに楽しさを見出す登山者、空気の気持ちを表してくれる雲がないとつまらない登山者も一定数いるようで。。。

【世界一空気の気持ちがわかるオトコ】
山岳気象のお師匠さん、猪熊隆之氏。
彼の率いるヤマテンでは年に数回「山頂で観天望気」というイベントを実施しています。
ツアーでも講習会でもなく、登山口または山頂で合流して雲を眺めながら気象的要因、地形的要因、肌で感じる気温感など喧喧諤諤やるイベント。
金曜日の武甲山山頂には晴れたらつまらない登山者、なぜか釣師が集結していました。
そんな人達にとって、猪熊さんはまさに神的存在。山頂ではお天気解説前に記念撮影タイムからスタート。
【山行前のお天気チェック】
みなさんは山行前のお天気チェックはどのようにされていますか?
てんきとくらす?山の天気(tenki.jp)?ヤマテン?各地の天気予報?
どれも手法としては正解ですが、ある予報は麓の市町村の天気であったり、登山指数であったり、「なぜそのような天気となるのか」は原因は不明ですよね。
登山指数Bと言われても曇りなのか、小雨なのか、強風なのかわからない。
天気図が少しだけ理解できれば風向き・強弱、雲の発生確率、降水の予測が立ちより現実的な天候予測を立てることができます。
登山アプリで山行計画立てるより、地形図で計画する方がよりルートの難易度、危険箇所の発見がしやすいのと同じです。
【登山前日に予想してみる】

前日時点での18日午前9時の予測図です。
一見すると大陸からの高気圧に覆われ全国的に穏やかに晴れる。というのがテレビの天気予報など含めた予測でした。
確かに大崩れしそうな気配はありません。
ですが、見ようによっては
・日本海側には気圧の谷が出現しそう
・東北に中心のある高気圧の縁を沿って活動山域には湿った空気が入ってきそう
<北東、南東の風に弱い武甲山>

南側を丹沢、西側を八ヶ岳、日本アルプス。北側を上信越の山々によって湿った空気から守られている秩父山地、武甲山。
ですが、北東から南東にかけては太平洋からの湿った空気が関東平野を渡りダイレクトにぶつかってきます。
前日の予測天気図からするとまさに湿った空気の流入、そして朝のうちの日照が予測されるので山肌を湿った空気が上昇して層積雲、積雲に包まれると予想できます。
【実際の天気はどんな感じ】
当日の9時と12時の実況天気図です。
・東北に中心のある高気圧の縁を沿って活動山域には湿った空気が入ってきそう
・南東に気圧の谷が発生しそう
という感じです。
午前9時の登山道入口。
杉の森の上には層積雲が広がっています。アメダスによるとやはり東側から風が入ってきています。
12時の山頂。
秩父盆地を挟んで北側、蓑山、破風山方面には積雲が広がっています。
日照により温められた空気が上昇したものと思われます。
武甲山の上部から東側には層積雲がかかりどんよりと肌寒い。

この後20分ほどで北側の積雲も層積雲に覆い隠されていきました。
下山中も垣間見える上空はどんより。
たぬ金亭で豚丼の食事を終えた15時ごろ見上げる武甲山は積雲に覆われていました。

アメダス、天気図を見るとそのあたりの時間帯から南寄りの風に変わったようです。
天気図、風向き、雲の配置が予想とリンクする。
晴れたらつまらないオトコたちの雲見山行となりました。
