こんにちは。
LifeLabo登山部、代表ガイドの小山和彦です。
みなさん、登山にいかれる時の山行計画はどのようにされていますか?
最近はアプリ派?紙地図派?的な議論もよくお見かけします。
数回タップするだけでルート、時間が算出され登山届も出せてしまう。確かに時間短縮できるし、便利。
ですが、ルート上に存在する危険、特徴など見逃していませんか?
なにより、ヤマ好きなら計画する時間も楽しい時間、メンバーとの交流を図る大事な時間のはず。
本記事のテーマは「地図読み お山のPDCAで山行は3倍楽しくなる」にフォーカスします。
「地図読みおぼえたいでーす」とおっしゃる方の大半がイメージされているのは「現在地特定」「進路決定」などいわゆるナビゲーション技術。
安全登山に最も必要なのは「読図・山行計画」です。
山行はPDCAサイクルで成り立っていると理解いただければわかりやすいと思います。
P:PLAN=山行計画(机上登山) 高低差、時間、リスクをあぶり出す
D:DO=ナビゲーション(登山実行)地形判読、現在位置、進路、時間を管理
C:CHECK=振り返り(評価)答え合わせ
A:ACTION=改善して次に生かす
計画する楽しさ、山行する楽しさ、答合わせする楽しさで山行は3倍楽しくなり、遭難リスクは軽減され、ご自身のスキルアップにも繋がります。
みなさま大好き薬師岳、雲ノ平山行でいつもあ世話になる「折立・薬師岳登山口から太郎平小屋」区間を例に山行計画の立て方を解説して行きます。
この計画がしっかりできれば「いまどこー?」「あとどれくらいー?」的なことがなくなります。
【行程を俯瞰する】
上記の地形図参照ください。
・スタートの薬師岳登山口は標高1,350m ゴールの太郎平小屋は標高2328m 標高差約1000m
・歩行距離 約8km
・薬師岳から北ノ俣岳を結ぶ稜線から伸びる尾根をあがる登り基調のルート。序盤急登で中盤以降緩く長い登りと見て取れる
・歩行ペースは標高差100mを20分。300mを1時間(休憩含まず)を基本ペースとします。
・ペースに合わせ標高差約300mごとの顕著な地形にチェックポイントを設ける。各ポイント間の所要時間1時間と想定。
【区間ごとに地形図から読み取れること】
各区間横の時間は実際の行動時間です。
<登山口-P1>
07:35 – 08:30(10分休憩)
・南東に向け登る
・等高線の詰まった急登区間。ペース配分に注意。1時間かけゆっくり。
・P1は広場状の地形で登山道が東に曲がっている。ここまできたら300m登っている。
・紅葉樹主体の樹林帯。実際に観察できたのは
ブナ、ミネカエデ、ミズナラ、トチノキ、ダケカンバ

<P1- P2>
08:40 – 10:05(途中15分休憩)
・進行が東に変わる。針葉樹主体の樹林帯に変わる。実際に観察できたのは
コメツガ、ゴヨウマツ、ナナカマド、ネズコ、シラビソ
・150m登ると広場状の休憩適地
・進路が南東に変わった先に三角点のある休憩適地
・三角点の先に荒地記号の平原。高い木が無くなるので風、雨に注意。寒い時は平原手前でアウター着る。
・平原地形なので南東に薬師岳が望めるはず
・平原の小ピークがP2

<P2 – P3>
10:05 – 11:35(10分休憩)
・P2小ピークを下り、ルート初の「鞍部」
・シラビソの樹林帯を100m登り返すと標高2,000のあたりで森林限界を超え視界がひらけます
・レイヤリングを変更するポイント。風、雨、低温リスクをマネジメントしなくては。
・南東方向に小ピークを巻くトラバースラインが目視できるはず。稜線気分が高まります。
・左手に小ピークを見ながらトラバース。
<P3 – 太郎平小屋>
11:45 – 12:30
・鞍部に降りて約200登ればゴール
・この辺りからは薬師岳からの稜線も望めるはず。「ゴール見えたよー」と声かければみんなの意識も上がるはず。
・小屋の稜線の先には水晶、鷲羽、雲ノ平、三俣蓮華、双六、黒部五郎が一望できるはず

水晶岳、ワリモ岳、鷲羽岳、三俣蓮華岳、双六岳、黒部五郎岳
上記にて読み取り、確認できたことから行動計画を整理する
<行動>
・累積標高差約1,000m 下降はほぼなし
・行動時間4時間 10分休憩4回 合計5時間想定
・必要な水分量 体重×行動時間×5×0.8=1,600ml(水1リットル ポカリ500ml お湯適量)
・消費カロリー 体重×行動時間×5=2,000kcal
・地形(広場や鞍部)、植生分布から現在位置が特定しやすい
<登山道上のリスク>
・やせ尾根、崩落地などの転滑落リスクは少ない
・森林限界以上は木道等の設置により道迷いリスクは軽減されている
・行動の半分は森林限界以上となるので雨、風による低体温症リスクが高い
・五光岩ベンチ周辺ドコモ通信可能
<エスケープ>
・疲労、天候条件により出発後5時間でP2未達の場合は往路下山とする
・強風、濃霧により標高2000m(森林限界)以上での行動に使用がある場合、停滞し状況観察。
改善されない場合は往路下山
行動計画は一人でもくもくやっても、メンバーでワイワイやっても楽しい空想登山。
LifeLabo登山部では秋から冬にかけて「計画ミーティグ+行動」のセット山行を計画しています。
地図読み、行動計画のスキルアップを目指す方はこちらのフォームから「計画ミーティング山行に興味あり」とご一報ください。
22年秋、尾瀬ヶ原、紅葉に絡めた講習山行を企画しています。
10月24日(月)初めてのロープワーク クローゼットに眠っているカラビナ 、ハーネス、スリングを活用しよう