こんにちは。
LifeLabo登山部。登山ガイドの小山和彦です。
2022年夏。振り返ると猛暑ではありましたがなんとなく「短かい夏」と感じます。
豪雨、土砂災害で被災された方がたにはお見舞い申し上げます。
高所の山小屋からはそろそろ秋の便りも届き始めました。
今年の紅葉にもココロ動きますが、小学校の頃ならった紅葉の仕組み、覚えていますか?
紅葉や落葉は、植物が冬を越すために物質やエネルギーを節約するしくみで、季節の変化が大きい地域に適応するための生き残り手段のひとつなのです。
しっかりおさらいしていきましょう。
【クロロフィルの働きで葉っぱはみどり色】
植物の葉はふだんの日中には、二酸化炭素と水、光を使って養分(エネルギー)と酸素を作っています。
すなわち光合成。
このとき、光を効率良く吸収するために働くのがクロロフィル(葉緑素)という色素。
植物細胞の中にある葉緑体に含まれていて、光の3原色(赤、青、緑)のうち、おもに青と赤の光を吸収し緑の光を反射するため、植物は緑に見えるのです。そして紅葉のしくみのひとつが、このクロロフィルの変化にあります。
【冬支度】
秋になると、樹木は冬支度をはじめます。気温が低くなると光合成などの反応速度が遅くなり、太陽の光も弱まるので、生産できる養分が減ります。消費エネルギーの少ない状態…いわば省エネモードとするために、葉のはたらきを徐々に止めていくのです。まず、葉の活動を低下させて消費エネルギーを節約するため葉の根もとに「離層」という水や養分の行き来を減らすバリアのようなものをつくります。
さらに葉のクロロフィルを分解して養分に変え、幹に送って活動のエネルギーとして利用します。クロロフィルが減るため緑色がしだいに弱くなるのです。
【黄葉の仕組み】
葉の緑色が弱まると、もとから葉にあった別の色素の色が目立つようになります。多くの葉にはクロロフィルの他にも、黄や赤に見えるカロテン類やキサントフィル類などの色素(まとめてカロテノイドという)があります。
これらの色は、クロロフィルが多いときは緑に隠れて感じられません。でもクロロフィルが減って緑色が薄まると目立つようになります。イチョウなどで起きる黄葉はこれが原因です。
また、ブナやケヤキなどでは、葉の中でタンニンが増えることで、濃い茶色(褐色)が目立つようになります。タンニンはお茶に含まれることで知られる物質で、そのもととなる物質は多くの植物がもとから持っています。これが葉の老化とともに酸化などの化学変化を起こして、褐色のタンニンになります。
これを紅葉や黄葉にたいして褐葉ということもあります。
【紅葉の仕組み】
モミジなど赤くなる植物では、葉緑体の分解が始まる前にアントシアニンという物質がつくられはじめます。アントシアニンは赤や紫の花などにも含まれる色素で、多くなると葉は赤く色づいて見えます。
ただ、秋になって光合成の効率が低くなったときには、太陽の光が強すぎて植物の体の害になる場合があります。アントシアニンはおもに紫外線を吸収するので、葉緑体のはたらきが弱まったときに強すぎる光をやわらげる役割があると考えられています。
このように紅葉は、クロロフィルが減ってもとからあるカロテノイドが目立つと黄色に、アントシアニンが多く作られると赤色になる現象です。
なお、葉の根もとにできる離層には、細胞のつながりをほぐす物質も含まれているため、完成すると柄がちぎれて葉の部分が落ちる植物もあります。
【落葉の仕組み】
陽が長く暖かい季節は葉を維持するのに必要なエネルギーより葉が作り出すエネルギーの方が多く、いわゆる「儲かっている」状態です。
陽が短く寒い秋になると葉が作り出すエネルギーが減り「赤字」状態になります。
こうなると木は葉を維持しておく理由がなくなり、離層から葉を落とします。
いかがでしたか?秋の山行のプチ知識になれば幸いです。
LifeLabo登山部では22年秋、紅葉に絡めた講習山行を企画しています。