【プロローグ】

2021年3月中旬。

間も無く緊急事態宣言も解除されそうなこの時期、世の中的にも乗鞍岳や木曽駒ヶ岳での雪崩事故が一般ニュースとして報じられ、中国で発生している黄砂の飛来も騒がれていた。

そんななか、群馬の名峰「上州武尊」に足を伸ばすことに。

融雪が始まった残雪期の行動リスクを様々体感しながらの山行となりました。

【日本海高気圧と沖武尊】

北アルプス穂高連邦と区別するため「上州武尊」と呼ばれるが上州武尊という山はない。

最高点2,158mの沖武尊(武尊山)を主峰として南東に伸びる尾根には中の岳、家ノ串山、前武尊などのピークが連なる。

南西には剣ヶ峰、西峰、獅子ヶ鼻山など八つのピークからなる独立山塊。

みなかみ町、川場村、片品村と境を形成して麓には多くのスキー場を抱えています。

武尊はその名の通り日本武尊(ヤマトタケルノミコト)に由来してるそうですが、江戸や明治の頃に修験者が語り始めた由来だそうです。

群馬の新潟寄りの山域ですから太平洋側よりは日本海側気象の影響が強いようです。

目視した限りでは雪庇も東側に発達していますから南岸低気圧より冬型の気圧配置の影響が顕著かと。

大陸からの高気圧が張り出す

山行3日前の天気図をチェックすると一時弱い冬型が入ってきたものの次第に大陸からの高気圧が張り出し行動日の19日は完全に高気圧の支配下。

高層天気図では早朝にかけて気圧の谷がかかりますが次第に晴れかなぁと予測。

ゲレンデ情報では1週間以上まとまった降雪はなく積雪量も2日で10センチ位の割合で融雪が始まっている。

足元はグサグサ、ルートは尾根上にとりますが、隣接する南側の急峻な谷地形では雪崩発生リスクは高いと思われます。

様々なメディアでは「雪山入門」「雪山初心者向け」的な露出が目立ちますが、雪庇が発達する地形、濃霧時の道迷い、積雪次第ではタイムアウト、行動不能といった遭難要件が簡単に想像できます。

ココヘリが義務化されたのもそんな背景があるのかなぁ。

そうならないよう必要なものを準備。

【計画と装備】

地形図上では痩せ尾根も目立つ

□山行計画

ルートを読むと累積標高は登り降りともに500m前後。

帰路の最終リフトを考えると13:30には沖武尊を発ちたい。

往路の最低鞍部(1912コル)に12時に到達していなければ撤退、エスケープすると計画。

剣ヶ峰の積雪状態次第。

□三種の神器

・ビーコン

マムートバリーボックス。雪山始めた頃の研修で使ったのがこの機種だったので使ってます。

・プローブ 

BDの240cmサイズのものを使用。

・シャベル

バックカントリーアクセスの大型サイズ使用。「男の子なんだから大きいので頑張って」と言われますが、今時そーゆー発想はよろしくないっすよね。

自発的にでかいの使ってます。重いけど。

□足元、手元

・わかん

マジックマウンテンのストレートタイプ。今回は出番なさそいうなので多分クルマに残置していく。

・アイゼン

グリベル 12本オートマ使用。4シーズン目。砥いだりしてないけど前回ゲイター引っ掛けて破いた。

・ピッケル 

グリベル ネパール。なんと74cm。大概の人に「昭和か?」「長すぎ」と言われるけど使いやすい。重いけど。

・ストック

雪山持っていく時は折りたたみ式ではなく伸縮式を使ってます。折りたたみ式は雪つまったり、ボタン凍ったりとか不具合出やすいので。

下手な補修w

□アウター

・ティートンブロス TBジャケット

メンブレンはネオシャルニットバッカー。抜けの良さと伸縮性はトリコになります。

・マウンテンハードウェア オーバーパンツ

メンブレンはDRY Q ELLITE。 クランポン履いたまま着脱できるようにサイドフルジップにしましたが、ハーネスつけてるとベンチレーション出来ないのが難点。

難点を超えてなお使い続ける抜けの良さと軽さ。

・RAB ムスタグゲイター

メンブレンはゴアテックス。の割に軽く柔らか。超お気に入り。

ストックしておきたいぐらいだが、どこ探してもアウトオブストック。なので補修しながら使ってます。

なにげにファイントラック 推し

□雪山の命 グローブ

厳冬期仕様のウール+オーバーは置いていく。

・ノースフェイス マウンテンシェルグローブ

メンブレンはゴアテックス。パームは革。インサレーションはないですが、シーリングされているので防水性はたかい。

気温の高い湿雪の春山で使います。気温に合わせてインナーをチョイス。

・ファイントラック  エバーブレスアルパイングローブ

メンブレンはエバースレス。インサレーションが入っているので低温時に使用します。

シーリングはされていないので完全防水ではない。

付属のフラッドラッシュ素材のインナーグローブが秀逸。

保温性、透湿性もあり単体使用時も雪がつきにくい。市販して欲しいレベル。

・ファイントラック  メリノスピングローブ

ウールとナイロンのハイブリッド。盛夏を除く各シーズン必ず携行しています。

冬季はインナーのスペアとして本性重視でつかています。

・ファイントラック  ラピッドラッシュグローブ

暴風性、撥水性が高いので超細かい作業を伴う緊急時用。

ホワイトバーム、いいよ

□エマージェンシー

・ファーストエイド

傷口洗浄、傷口保護、鎮痛ゲル、ステロイド軟膏、ポイズンリムーバー、テーピングテープ、エマージェンシーシート

穴の開いたボトルキャップは洗浄用。

・常備薬

下痢止め、鎮痛剤、風邪薬、芍薬甘草湯、アミノバイタル、日焼け止め

洗濯バサミは衣類乾燥用

・携帯トイレ

コース上にトイレがない時

□リスクヘッジ

防寒着、ツエルト、ハーネス、ガチャ類、ダクトテープ、ナイフ、ライター、ロープ

細引きは各種取り揃え

こいつらをチュガッチ45にググッと押し込む。

【アプローチ】

今回は3人パーティ。

7時高崎駅集合。東京6:08発とき301号で6:57高崎着。

高崎から乗用車で小一時間、川場スキー場へ。

スキー場から入山する場合は専用カウンターで登山届提出、ココヘリレンタル確認手続きが必要。

ゲレンデ内の歩行はダメなので往復ともリフト2本乗り継いで登山口へ。リフト券はICカード式なので購入、返却が必要。

下山時も同様に下山届、ココヘリ、リフト券返却の儀式が必要。

システマチックでもあり、手間でもあるんですがその分の時間もしっかり読み込んでおく必要があります。

【剣ヶ峰まで雪庇と急登】

そんなこんなで登山口で準備を整えます。

目の前にはそそり立つ山塊と雪庇と急登。もの急登を上がると剣ヶ峰?ではなく奥にもう一段登りがあります。

クラックの位置に注目

09:20 行動開始

まずは剣ヶ峰の基部1860mから1960m肩まで100mの登り。

上部ほど傾斜が強く樹林に行手を阻まれます。

東側に雪庇が発達しています。雪庇の重さ由来?のクラックも発生してます。

先行者を見るとクラックと雪庇の間を歩いています。

ちょっと怖いです。斜面中程のペア行動者のすぐ左にクラックが開いています。

クラックを跨いだ左側、樹林沿いに安全なトレースがついていますね。

地形図を見ればこのリッジ、コルに向けてかなり細く痩せています。

安パイを考えて樹林沿いにコースを取ります。

09:50 剣ヶ峰 肩

100m登るのに30分要しました。夏山より10分少々かかっています。

上部は枯れ枝を避けながら急な足場を登るのでまぁ、そんなもんか。

手元の装備を変えるため5分ほど呼吸を整えつつ、、

行く手に剣ヶ峰

なだらかな肩から剣ヶ峰へ標高差60mほど詰めていきます。

上部ほどリッジが狭くなっていきます。

10:07 剣ヶ峰 2020m

それなりに幅はあります

きっと昨年はもてはやされたピークでしょう。

ナイフリッジというほどには細くないですが、両脇は切れ落ちています。

濃霧、強風、すれ違いには注意が必要。

動画撮りながら歩く、、、恐ろしい。巻き込まれたくはない。

剣ヶ峰からの下降点露岩帯。

所々凍結しています。

ホールドはたくさんあるので見た目よりはおりやすいですが、尾根に乗るまでのトラバースの方が歩きづらいです。

下部も結構切れているので山側にしっかりピッケル 差し込んで足元踏み抜かないようすすみます。

ストック使ってる人はここが一番怖いんじゃないかな。

露岩帯より直下のトラバースに注意!です。

ここを越えると鞍部まで眺めのいい尾根下り。

気持ち良い稜線満喫

正面に沖武尊、東に中の岳、前武尊へ続く稜線。

西には獅子ヶ鼻から上越の山々。

南には遠く八ヶ岳、富士山もぼんやり見えています。

快晴でとってもいい気分!

なんですがよーく見るといろいろなリスクが散見されています。

最低鞍部越しに沖武尊方面を見やると

雪庇に破断面

・東側に発達した雪庇

植生をみるとトレースよりさらに西側を歩いた方が良さそうですね。

濃霧、吹雪いている時要注意ですね。

・雪崩痕

沖武尊手前、小ピークの直下に顕著な破断面が見えます。

見たところ高さ1m、幅20mほどあるのではないでしょうか。

南面は急峻ですし、日照によって崩れていきそうですね。

そのほかにも破断面、痕跡は所々に見受けられデブリはかなり下部に堆積しているようです。

登山者が立ち入るエリアではないですが、きっかけを作りたくはないですね。

・斑模様

カフェオレのような薄茶色のマダラ模様は、まさに黄砂の影響ではないでしょうか。

周囲の絶景とハザードを観察しながら剣ヶ峰から100m少々下り

10:39 1912コル

登り返して

10:48  1975 小ピーク

振り返れば剣ヶ峰

剣ヶ峰から細かなアップダウンを繰り返し40分ほどで沖武尊山頂手前の小ピークへ。

振り返ると絶景を楽しみつつ歩いてきた稜線が。

剣ヶ峰は北側から見た方が男前ですね。

飯士山同様、マッターホルンのようないでたち。

小ピーク手前の樹林の影で小休止。

沖武尊も目の前に

今朝は3時半にパスタと菓子パンで600kcalを摂取して以降、最近では新幹線や人の車での飲食は憚られるので、結構ガス切れ。食べてからすでに7時間、山行開始から1時間半経過している。

炭水化物を着火剤として放り込まないと蓄積してる脂肪も燃えてくれない。

ソーセージロールとブラックサンダー補給。

11:00 行動再開

沖武尊方面を見遣ると広大なバーンが山頂直下で屹立しています。

約170mの登り返し。

夏道なら30分強。なんとか50分で上がりたいところ。

胸突八丁

下部も見た目よりは実際登ると斜度を感じます。

夏道では屹立した下部をそのまままっすぐ上がるようですが、雪道は少し迂回して東の尾根から上がります。

ビクトリーロード

その方がビクトリーロード感つよく、ピークを見据えながら一歩一歩刻みながら登頂!

11:57 沖武尊山頂

おつかれでした

行動開始から2時間40分。大体予定時間で沖武尊山頂到着。

北西には至仏山と燧ヶ岳。

はるかなおぜー

その間が尾瀬が原ってことですね?

奥には多分、会津駒ヶ岳が見えています。

東側に日光白根山。

山頂にはそこらじゅうに落下したエビの尻尾。

少し強めの風が心地よく、風に向かって立ち休憩。

蜂蜜バターブレッドを補給。

午後になっても崩れる兆候はないが後ろ髪引かれながら降りる準備。

12:17 下山開始

帰り道もどこまでも青く、軽快に進む。

12:59 1912コル

標高差240mを50分程度で降りてきた。

適宜休憩を挟みながら剣ヶ峰取り付きに向けて脚を進めます。

帰路は消化試合にしたくないから登りより集中していろいろ考えながら。

といいつつ、何気に踏み跡辿ってますが、もう少し内側歩く方が安全ですね。

13:56 剣ヶ峰

14:20 行動終了

行動時間約5時間。

単独行でおそらく4時間くらい。

もし、これオール新雪だったら、、、、

剣ヶ峰までたどり着かない、ってことも充分ありえる。

雪、風、ガスどれか一つ状況が変わっただけでもタイムオーバーになる可能性は充分ある。

今日はたまたま帰ってこれただけ。

雪山は常に五感で情報感じないとダメだなー。

 

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